2021/06/21

他人への興味の欠落と、海外の音楽への興味の欠落は、同じ流れの上にあるのかもしれない

前回リリースして即ソールドしてしまったDaitroを2ndPressします。

https://longlegslongarms.jp/3la_releases/36/daitro_complete_discography_2nd.html

正直な話、1stPressの300セットが即ソールドしてしまうとは思ってなかったのです。
だってScreamo/Skramzの音源なんて日本で買い続けている人間なんてせいぜい20人程度ですから。
世界の片隅に体育座りしているScreamoバンドの音源を日本に持ち込んでディストロしている、僕はそんな20人のためだけに。

それは「よくわからん誰か」というマスに向けてではなく、会ったことは無いけど嗜好もなんとなく把握している具体的な誰かを想像している相手に向けての商売。
そして想像の外にいる人のことは、やっぱり及ばなかったですね、数が全然足りませんでした。
しかし、だからといって大量生産はできません。2ndPressは200セット限定です。限定というより、このあたりが適切な数だと思ってます。
それはマスに届けるための音楽ではない....。


欲しいけど手に入れられなかった人、そしてこれからDaitro好きになるかもしれない人(こちらはプラスα)がそれくらいの人数。
レア盤になりそうだから、メルカリで高騰しそうだから、ではなく今の時代に彼らの表現が本当に響くと僕は思ってるし必要だと思ってる。
そう思える人たちに届けばいいなと思ってます。
だから1stプレス見逃してしまった友達に、再発してるよって伝えてください。


Tenueも発送を終えました!
LPなのでこちらは再プレスはなかなか難しそうっすね。
...and its name was epyonもそうだけどこのあたりは好きな人に確実に届けられれば十分という気もしている。で、今Tenueの良さに気づかない人は、その人にとってのタイミングは今じゃない。矛盾しているようだけど、激情好きな人を増やしたいなとは思っていて、入り口として大事なのはDaitroとかのカタログを切らさないことなんだろうなと思う。

新譜が常に素晴らしいわけではないし、新しいバンドがすべてなわけじゃない。いま起こっていることを今理解できなくても、後から理解されたり、後から追いついたときがその人にとっての一番のタイミングだと思う。



創刊されたZINE、"MISTRUST"を読んでた。カラーなのがすごい。
その中でmoreruは「激情嫌い」と公言しているのだが、どう考えても彼らは激情のこと好きだろと思ってしまう。激情として扱われてるジャンルが嫌いなのは、わかるような気がするが。


でもmoreruって「激情として認識されてるか?」と考えるとその答えは「NO」だと思う。
旧来の「ハードコア」と思想的にもサウンド的にも違う。でも考え方はオルタナティブだと思う。そのオルタナティブな部分が本当の激情バンド、例えばPortraits Of Pastのように誰かを怒らせたり否定されたり嫌われたりしながら自分たちを信じているエモーティブな表現を貫いたバンドたちと共通する点があると、"僕は"、感じている。他の人は何をもって激情だと言っているんだろうか。激情を深く聴いている人は、そんなこと言わないような気もする。知らないけど。



新宿でインタビューを収録してきた。久しぶりの新宿はまだ緊急事態宣言解除前、酒を出す店が閉まっているところが多く人も少し少なめか戻ってきているような気もするけど。あとストリート飲みが数は少ないが目立つ。いまの時代っぽい。


音楽はすげー感情的なものだから、それが政治的に正しい/間違っている以前に、その人に合う/合わないというところは大きい。例えば「ヒップホップが嫌いだ」と言っている人がいたら、その人はヒップホップをほとんど聞いていない「食わず嫌い」の人だ。そしてもし「ヒップホップなんてものは全然良くない」なんて言いだしたら、嘘つきかもしれない。音楽の1ジャンルでも深く聴いている人は、ジャンルの中に無限のグラデーションが存在していることは理解しているはずだ。


それなりに歴史を積んできた音楽の1ジャンルにおいて、ヒップホップだろうがパンクハードコアだろうがメタルだろうが、その中に様々なグラデーションが存在している。そのグラデーションの中に自分にピッタリの、奇跡の一枚が存在していることを知っている。これがディガーの思想だと思う。かつて日本語ラップがすごく苦手だったが、THA BLUEHERBやMSCや降神とかが好きになれたのは、暗いビートや知的な言葉の組み合わせが自分に合ったからだと思っている。そこから他のヒップホップのアルバムを聴けるようになっていく。

でもそれができたのは別の音楽ジャンルをたまたま深く聴いていて、ジャンルの中にグラーデーションがあることを理解していたからかもしれない。「もっと暗いやつはない?」「もっと声が低いほうが好きかも」「音はマッチョなやつより、ショボいほうがむしろ好きだな」そうやって自分というものを知っていく。その過程は、ジャンルを知るというより自分を知るということなのだ。


ちなみに、邦ロックファンは全然音楽をディグらない傾向があるらしい。
同じアーティスト、同じ曲をひたすら聴き続けている、というデータはサブスク時代になってより鮮明に浮かび上がっているという。YOASOBIの「夜に駆ける」は2019年のリリースだが、Spotifyの今週の再生ランキングの4位に入っていた。(「〜〜な人が多い」と文章書く人は根拠を示すべきだと思う)
それが良いことだとはあまり思えない。一方、自分の周りの人は結構雑食に音楽を聴いている人が多いと感じていて、1ジャンルだけをストイックに聴き続けている人はいない。

他人への興味の欠落と、海外の音楽への興味の欠落は、同じ流れの上にあるのかもしれないと思う。乱暴な言い分だ。香港で起こっていること、ミャンマーで起こっていること、ウイグルで起こっていること、イスラエルで起こっていることなんて誰が気にして生きているのか。残念ながら興味は敬意と繋がっている。


すげーどうでもいいんだけど、月曜にラジオで米津玄師が流れていて、
リスナーからのお便り紹介で、米津を好きになったことをきっかけにもっと知りたいと思うようになりTwitterを始めたという人のエピソードがあった。BTSなんかも、もっと歌詞を知りたいが故に韓国語を自力で勉強しだす人もいるという。自分で何かを始めた人の世界は様変わりしたと思うので、音楽が世界を変えることはある。と改めて思いました。




音楽配信の「おすすめ」は似た曲ばかり? そんな悪循環から脱却するために必要なこと

https://wired.jp/2021/01/27/spotify-feedback-loop-find-new-music/

それは新譜のレコードに興味を持つことが解決策です。







2021/06/09

ディストロで音源を漁ってる人は世界からみたら狂人だけど、絶対に必要な人間。それだけが人間と言ってもいい。

全員必読。

https://note.com/actionbyrevenge/n/na27f0b7bef28

某氏による備忘録的ブログ、クソ長い。

クリエイターというバンドをご存知だろうか?という導入から始めるくせに、文章中で一番大事なのはクリエイターの話ではなかった、というまさにコピーライティングセンスとはこのようなことを言う。商売とはこうありたいものですな。


さて、僕も音楽を紹介している側のはしくれであったり、自分が専門でない分野に関してはほとんど信頼している誰かのフィルターを通して音楽を知っていく。なるべく自分に影響度の大きい店には定期的にお金を落とすように意識し、noteで課金したり、現物を買ってみたり、知らん人がZINEを作ってもひとまずは買ってみたり、というようなことをしている。自分のほうも普段は全く売れないような音楽をせっせと入荷し、嘘と真実を織り交ぜた怪文書をレビューと称して掲載し、売れてもたいした利益にもならんことを長年やりつづけている。この作業だけで考えてしまうと無駄だなーとか、レビュー読んでるくせに誰も買わねえな、とかRTとかいいねとか要らんのじゃ、レコードを買えレコードを。などとブツブツ言っていたりするが、大きなリリースモノがあるとたくさんの人が買って行ってくれるし、長年の付き合いからなのか予約商品が半年届かなくても何も言わず待っていてくれたり(Soul Gloやコロナ期の音源についてはすみませんでした)、海外レーベルとも信頼関係ができたりして、Daitroの編集盤のリリースが実現しちゃったりする。総合的にみたら、まぁまぁの金額を報酬を受け取っているし、還元されていない、とは思わない。でも1組、1組のバンドへの還元はできているのかというと、そんなことはなさそうだよなと思う。このコロナ禍で潤ったのは通販の強いレーベルやレコ屋であろう。アーティストやライブハウスで売り上げが伸びた人はいるのだろうか。


映像を編集しました。みんな見てね。

色々あって遅くなりましたが、日々勉強すね。外注して良い部分/悪い部分、自分がディレクションしないといけない部分、自分しか作業ができない部分、そういうところの線引きが明確になりました。己の未熟さ故の遅れと認識している。

まぁしかし、翻訳関係はいま外注しているんですが、かなり良い関係を築けています。
いろいろ作業していて気付いたんですが僕がその作業する人がなぜその表現をしたのか、という解釈に興味を持っていて、その表現を選択した理由があるなら正だし、理由がなければNGだ。Daitroの歌詞は女性の方で、やりとりをしながら丁寧な翻訳をしてもらいました。TenueやAINWE、この先にリリースするNo Manなどは同じ男性の方が作業していて、それぞれの作品で意訳をつっこんで来ていますが、バンドの表現を汲み取ってくれてすごいなと思ってます。ご期待ください。


「映画を早送りで観る人たち」の出現が示す、恐ろしい未来
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/81647

最近バズっていた記事、これは最初に紹介した某氏が指摘していることに近いものがあると思う。Netflix、いわゆるサブスク的な「コスパ」と、早送り機能という「便利さ」、それによって失われていくもの。ちなみにTwitterでいうところのRTやいいね機能も危ない。


現代人は読まない…。リンク先を見ずにリツイートしまくる人が大半であると判明https://www.gizmodo.jp/2016/06/22_5.html

Netflixも足早に消化していく人が膨大なテキストのブログなどを読むだろうかと考えると答えはNOなのである。RT先の記事をきちんと読んでるやつはほとんどいない。自分こんなことに興味あるんですー(でもちゃんと読んでないし商品も買わないっす)というアピールに使われ流れていくレコード屋のツイートが不憫である。

インスタント、すべてがインスタントなのよ。


こんな世界なので、サブスクで聞くより1000倍くらい高価なレコードで音楽聞くこととか
それをAmazonよりも高い謎の個人商店で購入するとか
Screamo/Skramzのバンドたちがハイプな流行から距離を置いてバカにされながら音楽続けてることとか
限定したプレス枚数で限られた人だけに現物を届けようとしてることとか
すべてがつながっていると思います。


なのでこの程度の文章を長文と思わずに読了し、ディストロで音源を漁ってる人は世界からみたら狂人だけど、絶対に必要な人間。それだけが人間と言ってもいい。