2015/09/14

激情ハードコアの本質を何に求めるのかという話

新ブログに改訂版を掲載。
http://gekion-yawa.net/real-screamo-1/
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ゆまっちさんのツイートが異常に伸びていました。
激情ハードコア最近聞いているんだけど何聞いていいかわからん!
そもそもどこで買えるかわからん!
という声は前々から聞いていたけど、このツイートの伸び方をみて、本当に何かしらの定説はあっていいんじゃないかなと思いました。昔はコミュニケーションの場であったmixiが消滅、2chも衰退、twitterではラーメンとアイドルの話題ばかり(by某氏)という絶望的な状況下、音楽の話題でどこで話されているか全くわからない。特に90年代終盤〜00年代中盤にかけて地下音楽シーンでムーブメントになったこの「激情ハードコア」というジャンルに関しては、ネットの意見が中心になっていて、ディスクレビューも微妙なものしか残っていない。あっても「emo」のくくりに取り込まれてしまっていて、とんでもなく世間的な評価は低いサブジャンルです。良い面としては、未だにアンダーグラウンドの立ち位置をキープしているのでコアなリスナーが残っていると思っています。

このリストにあがっているのがかっこいい音源ばかりだということについては異論の余地はありません。他にも良いのはありますが、これをピックアップした人もあまり昔から聴いていたわけではないみたいなので、それ故に初心者にとっては良い指針になるんじゃないかと思います。ディスコグラフィ盤CDをリリースする、というアクションも後世にとっては非常に重要だなと改めて感じました。

ただ、激情ハードコアってそもそも何なん?という話になったときに世代間、地域間の意識の断絶については理解しておく必要があると思います。激情ハードコアの本質を何に求めるのかという話です。これはそれぞれ個人個人で定義が異なる問題ですが、僕はEbullitionというレーベルこそが激情ハードコアのスタンスを体現していると思っています。90年代の激情ハードコアの中心地はアメリカにありました。2000年代に入り、それはヨーロッパへ移っていきます。日本にはアメリカとヨーロッパの両方から情報が入って来た形になっていたと思います。このツイートであがっている2000年代のリストをみると、それがよくわかります。90年代はUSバンドが多く、00年代はEUバンドが多いですよね。日本でも激情バンドが大量発生していたのが00年代です。2010年代に入り、そのほとんどは消えました。消えたバンドについては知ったこっちゃないというのが本心でしたが、最近みちのくonline店主と深夜のラブレターをやりとりしたり、gauge means nothinsカサヌマ氏にインタビューしたりする中で自分自身かなり考えを改めさせられました。とんでもない思い違いをしていたみたいです。

海外ではどうだかわかりませんが、今の国内での意見は「時代に合わない音楽の作り方をしているバンドは消えて行って当然」というような見方があるように感じています。それはある部分では真実だと思います。時代に適合している音楽だからこそ広く支持され、後世に伝わっていきます。ただ、その伝わり方が正しいかという問題については、「ほとんどの場合において、物事は本質が伝わらない」というのが真実なんじゃないでしょうか。
90年代のebullitionが提示していた激情(そんな呼び名は向こうでは無い)と、00年代のEUでムーブメントになっていた激情は違います。日本で発生したムーブメントはもっと別物です。日本の国内音楽シーンを考えてもわかりますよね。

売れていれば正しいなんてことも、売り方が時代にあっていれば正しいなんてこともないはずです。物事の本質を捉えようとする知的な視点は不可欠で、それがなければ「激情」というテンプレにハマった全くの別物の音楽です。いまのDeathwishのスタンスはレーベルには悪いけどそのテンプレを助長しているようにも感じます。同じスタジオで同じエンジニアで同じテイストのジャケットを作ってって、それはもうファクトリーじゃないですか。Ebullitionはテンプレにハマりつつあるストレートエッジに対して、俺等はこういうのもありだと思うぜ?というオルタナティブな価値観を提示していました。この両者のスタンスは対極にあると言えます。Deathwishのバンド達はもちろん素晴らしいし、音楽のクオリティも高いと思いますが、それらが売れているからと言って2010年を代表する激情ハードコアと評価してしまうのは、重要なことを見落としていることだと気づきました。

物事の本質は正しく伝わりません。伝わるのは「誰にでもコピーしやすいわかりやすい表現」です。envyのサウンドをまるごと再現しても、ブルーハーブのリリックをコピペしても彼らの表現しようとしていたことを理解することも、思想を手に入れられるわけでもありません。それはネオクラストの話でも同じです。これはディスクレビュー本、ほんとうに作らないといけないかもですね。続きはそのときに書きます。


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物事の本質はその原始の部分にあるはずです。






追記:以下ツイッターの反応
90年代は聴いてたけど、00年代でもう追わなくなったって意見もちらほら。
ただやっぱりこの記事が届くのも90年代通過組のほうが多いようにも見受けられました。
異論、反論、ぜんぜんウェルカムですよ。

































↑この人がいちばん酷いw

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