2015/10/12

アンダーグラウンドなバンドが平和な街に出て演奏するとどうなるか〜京王線と小田急線が交差する時、物語は始まる〜



物語の舞台となるのは、東京・多摩丘陵。
都市部の住宅難を解消するために建設されたニュータウンによって、住処を追われることになったタヌキたちが、自分たちの故郷を守るために人間相手に戦いを挑んでから既に20年が過ぎていた。郊外に建設された巨大な人工都市『多摩センター』は今や人類の第二の故郷となり、人々はそこで子を産み、育て、そして死んでいった。
多摩センターは京王相模原線と小田急多摩線、そしてモノレールがクロスオーバーする多摩市、町田市、相模原市の国境付近に位置し、その駅前はサンリオ・ピューロランド、ベネッセ(a.k.a 進研ゼミ)の本社ビルが見下ろし、クリスマスシーズンには恋人達を祝福する巨大なイルミネーションに包まれる。そんな平和な街に年に一度開催される"荒魂GIG"は、圧倒的な違和感を持って存在感を発揮し続けている。

「第1話 Broiler大地に立つ!」


























荒魂ギグとは?
http://aratamagig.blogspot.jp/2013/09/2010daybreak-noiseincident-20102011.html

2010年からDAYBREAKと満州候補者で企画していた『NOISE+INCIDENT』が『荒魂ギグ』と改名され開催されているDIYなパンク・ハードコア祭。名前の『荒魂』の意味は「荒々しく活動的な作用をする魂の働き」という意味があるらしい。そこから転じて新しいものを生み出す力、などという解釈もあるとのこと。自分は八王子市に住んでいるときは隣駅で開催されていたので観に行っていて、去年は出演者でも出ましたが今年2015年は普通に客&ディストロ出店(勝手に)という形で参加させて頂きました。



この『荒魂ギグ』が普通の野外イベントと差別化され、楽しみにされている一番の理由はそのシチュエーションにあります。普段は文字通り地下ライブハウスのシーンで活動を拡げるアンダーグラウンドなパンク、ハードコア、メタルと言ったエクストリームな音楽を奏でる爆音バンドが平和な街に出て来て演奏するのですが、会場が街の一角の公園にあり比較的通行人が多い場所であるということもあり、本来出会うことの無い、出会う必要のない"あちら側"と"こちら側"の人間の交流が生まれる"場"が発生します。
このイベントの参加者とは出演者やオーディエンスだけでなく、一般市民である通行人も強制的に含まれる可能性があり、なんとも予測不可能な要素と、それら一般市民から放たれる冷たい視線が「むしろ気持ち良い」というドM的発想から来る謎の高揚感が時としてバンドに思わぬ作用を及ぼし、伝説的なアクトが成立することもしばしば。



今や伝説となっている2013年のCosmic Neuroseのアクトは僕も実際に見ていましたが、インパクトのあるステージングというのは、パンク・ハードコアを聞いたことがない人をも惹き付ける魅力があり、これぞパンクというエネルギーに満ちあふれたものでした。そもそも、ライブハウスやスタジオライブなどで人が来るのを待つようなスタイルではなく、自らアウェイな場所に身を乗り出して行く姿勢こそ、今のシーンに必要なことかもしれません。わけわからないままエクストリーム音楽を楽しむ家族連れ、女子高生、老夫婦なども確認できるのはとても面白いです。"無理矢理にでも接点を作りだす" ←これってすごくクリエイティブなことじゃないですかね。うるせえ..と思っている通行人の方も多いと思いますが、面白がってくれているキッズの中にはパンクなどに理解が生まれ、後にこれはそういうことだったのかと分かる日が来るかもしれません。ライブハウスに客が来ない、と嘆くのではなくポジティブに外へ出て、煙たがられ、それでも工夫を凝らしてまた出て行く、と。ライブハウスの中ってある意味、守られていますからね。もっと外へ出て行こう。そういうメッセージを勝手に受け取りました。



先日Tokyo Unlearnedに招いてくれた安藤さんがギターを弾いているKowloon Ghost Syndicateも出演していました。Voの笠沼さんはMCでしっかりイベントの趣旨やカンパが寄付に使われることなども説明していて、時にシリアスにMCすることはただ馬鹿騒ぎしているだけじゃないってことが伝わるし、流石だなぁと思いましたし、その後の安藤さんのMCはバンドマンでも結婚できるしなんなら住宅ローンも組める!という謎のアピールでした。大変勇気づけられます。ディストロもNovembre Records,Unknown Pleasure,3LAという感じで勝手に路面に展開していく感じも面白かったです。好きなようにみんな何か持ち寄ってくるのも面白いと思います。去年は某バンドの方がリリカルスクールのCDを配布していましたし。


























今回2015年の荒魂GIGのトリを飾ったのは以前ブログでも取り上げたBroiler。(Broilerについては過去記事『Mr.Childrenから受けたトラウマをGrindに昇華して叫ぶBROILERというバンド』参照)
やっぱり暴れ回っているバンドが出てくると通行人も面白がったりしていて、隣接する立体駐車場から見下ろしている家族連れもちらほら。女子高生にも人気でした。パンクやメタルといったエクストリームな音楽のリスナーというのは過去にそういった音楽の"洗礼"を通過している人達ですが、パンクの衝撃を与える一番のシチュエーションって不意打ちだと思っていて、洗礼をまだ受けていない人達に向けての不意打ちはライブハウスではなくて街中で予想外の展開からの一撃っていうのは大いにアリだと思いました。
うるさい音楽をうるさい音楽しか鳴っていない空間に持ち込んでもノイズにはならないんですよね。うるさい音楽を効果的なものにするには静かな空間に持ち込む事。周囲の状況とは異なる「違和感」を作り出すことがインパクトを作り出すことのヒントになるはずです。どうやって音楽に耳をかたむけてもらえるのかを考えた時、音楽だけでなく、どんなシチュエーションでそれが鳴らされているのか、も考えるべきなんでしょう。

Cosmic Neuroseは来週、多摩センターにCOME BACKするそうです。必見。





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